教育の2020年問題って知ってる? 背景にあるのは安倍政権・財界の要望
【2020年の教育問題】を石川一郎氏が徹底解説1/3
記述式の導入=「受験生に思考力を求めよ」というメッセージ
石川…記述式の導入は「大学は知識の量ではなく思考力を受験生に求めよ」という国からのメッセージと捉えてよいでしょう。現状私立大学を中心として入試問題は知識偏重に傾いています。それに応じて高校の定期試験なども知識の量を問うものが多くなっている現実がありますね。
トオル…そういった流れに一石を投じるということなのかな。
シズカ…でも、センター試験って私立大学に比べたら知識は必要としない気がするわ。なぜ、それを変えるのかしら。
石川…鋭いご指摘です。実は現在のマークシート式のセンター試験でも思考力を問う問題は結構出題されています。一番問題なのは私立大学の入試問題。しかし国は私立大学の入試問題を変える権限まではありませんよね。そこでまず大学入試の象徴的存在であり、みずからコントロールできるセンター試験の形式を変えることで、入試のあり方、学校教育全体にメッセージを発そうとしているのです。
トオル…やっぱり私立大学が一番極端なんだね。確かに僕が高校時代に受験した私大も、世界史の試験とか年号クイズみたいな問題も多かった記憶があるなあ。
シズカ…でも逆に言えば、教科書をしっかり覚えてさえいれば解ける。
石川…そういった形式の試験は、学校で学んだことをいかに要領よく再現するかが重要でした。しかし、それでは「言われたこと以外しなくなること」に慣れてしまいます。自分で何かを見つけてやる必要はないですから。それを記述式を入れることで変えていこうという方針なのですが、一方で、採点にかかる手間の問題もある。そういった背景もあり、比較的採点のしやすい数学と国語の一部で記述を入れようとしています。
トオル…まずは段階的にということですね。
シズカ…英語はどうなるんでしょう?
石川…英語はこれまでライティングやリーディング、簡単なリスニングが行われていましたが、そこからスピーキングが追加される方向です。リスニングの量も増やす方向と言われてもいますね。しかし、それこそ採点の手間の壁がありますから、TOEICなどの外部試験を使う案が出たりなど、まだ確定していない部分が多いですね。(第二回、第三回に続く)
〈第二回:センター廃止にはじまる教育改革。教師たちは「ゆとり教育」失敗の教訓をいかせるか〉
〈第三回:もう「言われたことをやる」では生き残れない。今日本人に必要なマインドチェンジ〉
〈4コマ編:4コマで分かる!?『2020年の教育問題』〉